今村さんは、サントリーで飲料ブランドのマーケティングを経験した後、レッドブル・ジャパン、クロスインデックスを経て、2010年9月より、ハイコーン社の日本事業開発担当責任者に就任されました。ハイコーン社は、環境に優しいエコ・パッケージのパイオニアです。
2010年10月、ハイコーン・ジャパンの新オフィスを訪問し、お話をうかがってきました。
ハイコーンの魅力を通じて、今村さんの哲学や価値観を探ります。リーダー職、または、社長、取締役などのトップの立場におられる方には、非常に役立つ内容でしょう。
消費者、メーカー、そして地球環境。三方よしの製品 – ハイコーン
今村さんは、サントリーや、レッドブルといった会社で、主に飲料関係のブランド・マネジメントやマーケティングを担当されました。そして、人生の折り返し地点を迎え、自分の理想の仕事を探していた時に出会ったのが、ハイコーン社でした。
ハイコーン社は、飲料や食品などの消費財のマルチ・パッケージ(複数を束ねるパッケージ)において、省資源化・エコ化・低コスト化などの画期的なバリューをもたらしたパイオニア的なメーカーで、シカゴに拠点を置くITW社(Fortune 500、売上1兆円以上)のグループ会社です。
欧米では、コカコーラ、ウォルマート、カルフールなどを中心に、エコ・パッケージ化が進み、ハイコーンは標準的なパッケージとして強く支持されています。しかし、日本では、20年以上前から、紙パッケージや紙カートン(段ボール箱)が主流で、過剰包装が課題となっています。
今村さんは、活き活きとした表情で、ハイコーン社の魅力について話してくれました。
(1)地球にやさしい
ハイコーンの材質は、100%リサイクル可能な低濃度ポリエチレンです。
ハイコーンは手の平サイズで、小さく折りたためるくらいの軽量です。そして、太陽光線や紫外線にあたると、3?4週間で、なんと自然分解してしまうのです。
欧米の消費者は、単に品質が良いとか、安いというだけでは購入しなくなってきています。加えて、「いかに環境にやさしいか、または、省資源であるか」ということが商品選択のポイントなんですね。
日本の消費者も欧米に倣い、環境への意識が高まってきています。エコバックを使う、ごみの分類をする、リサイクルに出す、それだけでなく、過剰包装を避け、環境にやさしい製品を選びたいという思いが強まっているのです。
従来の紙パッケージよりも、たったの10分の1!
日本のスーパーでは、ビールの6本パックを探したら、必ず紙のパックですよね。実は、過剰包装となっているこの紙パックは、膨大なゴミと高コストの原因となっているのです。
もし紙パッケージから、ハイコーンに変更した場合、
⇒輸送エネルギー(ガソリン)は10分の1以下
⇒廃棄物の量も10分の1以下
⇒そして、温室効果ガスも約9-10分の1以下、
という効果が、数字で証明されています(出展:フランクリン・アソシエイツ 2009)。メーカーにとっては億円単位の節約になりえるし、消費者にとっては安くて、環境にもやさしいという利点を提供できるのです。
ブランディング/広告・宣伝にも効果的
日本の飲料メーカーのブランド・マネージャーは、より製品の認知度をあげようと、紙パッケージで製品本体を覆い、新しい広告や宣伝文句を書き、アピールしています。
しかし、ヨーロッパでは、このような紙パッケージよりも、本体のデザインを効果的に見せたほうが、ブランド認知度が向上するという実例やリサーチ結果がでています。ハイコーンは、単なる透明の取っ手のようなパッケージなので、消費者は、製品本体を直接見ることになります。調査によると、製品本体のデザインをそのまま活かしたほうが、ブランド認知度が高くなり、売上向上につながるということがわかりました。
以上3点から、ハイコーン社のパッケージに変えるだけで、消費者やメーカーのニーズにもこたえられ、かつ、地球環境にもやさしいという、三方よしになるわけです。まるで、近江商人の商業理念のようですね。
飲料マーケティングと、チーム・ビルディングの達人
今村さんは、東京大学卒業で、ケロッグ経営大学院(以下、ケロッグ)でMBAを取得されました。こう書くと、頭の良いエリートいうイメージですが、それだけではありません。本当に優しい、チーム・ビルディングの達人でもあります。
サントリー時代の活躍ぶりについて少し触れましょう。
サントリー勤務時代、今村さんは、飲料部門でマーケティング担当をされていました。お話によると、年間1000以上もの新製品がでる激戦の飲料マーケットで、生き残れる新製品は年間3ブランドもあれば良いほうで、カテゴリーのNo.2では存続自体が不確定だったといいます。完全に供給過剰の状態です。当時、紅茶カテゴリーのNo.1ブランドは、キリンの「午後の紅茶」であり、いろんなメーカーが挑戦しましたが、なかなか勝つことができませんでした。
そんな中、リプトンのブランドを所有しているユニリーバ社と、サントリーが提携して、リプトンブランドの紅茶飲料が誕生しました。しかし、二つの異なる文化を持った会社が一緒に仕事をするのは非常に難しく、当時の担当者は体調不調を訴え、会社に来られなくなったほどでした。ほどなく商品は完全に店頭から消えてしまい、両社は仲間割れ状態になってしまいました。
そこで、新規にブランド担当となったのが今村さんだったのです。彼が最初にとりかかったのは、絶縁状態であったユニリーバ社との関係修復でした。
まず、今村さんは、ユニリーバ社の方々との対話を重ねました。しかも、一対一で。そして、差支えのない限り、意図的に、夕方からのミーティングを設定しました。そうすることで、雰囲気が良くなったところで、「ちょっと行きますか!(飲みに)」という提案ができるからです。
「人は、飲食をしている、つまり、口を開いているときに、心も開いているんですよ。そういうときには、互いの理解も進むし、仲良くもなれます。あ、仕事の話は一切ないですよ(笑)」。
今村流が実を結んで、一気にチームが一致団結し、ゼロから新商品開発が開始されました。毎週、毎週、ミーティングを重ね、第1弾を秋にリリースできましたが、それはあまり良い結果ではありませんでした。しかし、次の春にリリースした第2弾を出した瞬間、爆発的に販売数を伸ばし、見事、午後の紅茶の一角を崩して、レモンティーカテゴリーでNo.1になったのです。これが今も健在の、リプトン「リモーネ」なのです。
「コピーライター、デザイナー、R&D、そして、事業部担当者で構成される両社のメンバー。一人一人はもちろん優秀ですが、プロジェクトが成功した最大の要因は、個性の異なるメンバーがお互いに刺激しあって力を最大限発揮できた、素晴らしいチーム環境にあったと思います」。
今村さんは、飲料マーケティングだけでなく、チームの才能を120%活かせるチーム・ビルディングの達人でもあるのです。
もっと世のため、人のためになりたいという思い
今村さんは、意識して人を大切にする人です。
「アメリカへ面接にいったときに、本社のマーケティング・ディレクターは、何とケロッグ卒業生でした。また、ハイコーン就職がきまった後も、サントリー時代の上司や同僚、また、ケロッグの皆が、声をかけてきてくれて、人を紹介してくれたり、助言をくれたりしました。いままで、いつか役に立つかどうかなんて考えずに人付き合いをしてきました。本当にいろんな人に感謝しています」。
そうです。人を大切にする人だからこそ、人から大切にされるのでしょうね。
そして、ハイコーン社を選んだ理由も、「同じ価値観を感じたから」といいます。
なるほど、ハイコーン社は、アメリカ企業にはめずらしく、勤続20年、30年選手が結構いて、ターンオーバーも低く、人やチーム力を重視している会社です。
「サントリーに入社したときも、それ以降も、常に素晴らしい仕事につけたと感じました。しかし、心の片隅で、もっと世のため、人のために役立ちたいという思いがありました。自分が父親として子供に誇りをもって語れて、いいなと思ってもらえるような人間でいたいという思いもあります。そんな時に、ハイコーン社の話がきたときは、自分の心に描いていた理想の仕事なのではないか、と思いました」
面接や現地での説明を通じて、心の底から、消費者にとっても、メーカーにとっても、地球にとっても良い製品であることがわかった、といいます。
紙パックが主流の日本は、ハイコーンのような環境にやさしいマルチ・パッケージは皆無の状態。今村さんは、これを大きなチャンスととらえ、日本に良い変化をもたらす決意をされました。
これから今村さんは、ハイコーン・ジャパンのビジョンを描きながら、日本市場への開拓を進めていきます。地球にやさしく、消費者、メーカーにとっても良いことづくしのハイコーンを、是非、応援してください。
ヒト・ブランディングのための国際マーケティング・エージェント
関連サイト
ハイコーン・ジャパンのサイト
http://www.hi-cone.com/index.php?id=8&L=3
米ハイコーン社環境部門ディレクターであるHayden氏インタビュー
http://media.excite.co.jp/10th/eco/interview01.html
環境に優しいハイコーン
http://www.hi-cone.com/index.php?id=5&L=3
サントリー社リモーネ
http://www.suntory.co.jp/news/2005/9010-2.html