近代マーケティングの父 フィリップ・コトラー教授の知られざる魅力

グローバル・リーダーの横顔
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Interview グローバル・リーダーの横顔

ビジネス界で活躍しているグローバル・リーダーの横顔、ビジネスの最先端情報やリーダーシップの真髄に触れるインタビュー。

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小田原 浩 マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー

海外のビジネススクール、MBAを取得できるところは数々ある。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院(ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント)は、 ハーバード、 スタンフォード、 ウォートン(ペンシルベニア大学)、 ブース(シカゴ大学)と共に、世界的に高い評価を受けているビジネススクールの一つである。マーケティングの分野では圧倒的な強さを持ち、多様性、高いインターパーソナル・スキルなど、特徴はいろいろあるが、その中でも際立つのが、チームワークを重視した教育だ。

マッキンゼーのパートナーとして、グローバルに活躍している小田原さんが、ケロッグでいかにしてグローバルなチーム力やリーダーシップを学んだかを語ってくれた。

第一回はこちら

ケロッグは、一にも二にも “チームワーク”

01

「ケロッグはどの学校よりもチームで何かをするという事を重視します。アサインメントやプロジェクトはチームでやったりしますし、イベントやクラブ活動も盛んです」

授業カリキュラムの仕組みとして、強制的にチームでいろいろやらせる。必修科目の期間は、先生がチーム組みを指示するが、その後は自分たちでチームを作る。さまざまな得意技をもっていたり、協力的な人は人気があり、いろいろなチームから引っ張りだことなるが、そうでない人は誰からも声をかけられない。

「エバンストンという小さい町に、学生の9割以上が住んでいますから、いつでもリアルに集まれるんですよ」

メールなどネットだけではなく、実際に一緒に顔を合わせて、チームで行動できる貴重な環境がある。

やはり、自分はネットワーキングに向いていない

02

ケロッグの学生は、国を問わず、高いコミュニケーション力を持ち、社交的な人が多い。だが小田原さんは、初めて会う人との会話が苦手で、いわゆる「人見知り」であったという。

「知らない人は大の苦手。パーティーだとか、ネットワーキングのためのイベントは、基本的に行かないですね。苦痛でしかありませんでした」

それでもケロッグにいた時は、学校のいろいろなイベントや集まりに極力顔を出して、皆に挨拶することを意識的に心がけた。たとえ、次の日の予習が間に合わなくても、コミュニティー活動を優先することもあった。

「ケロッグで嫌というほど イベントやパーティーに行きましたが、結局、自分はネットワーキングには向いてない、それがはっきりとわかりました」

03

そんな彼が、いかにして人との距離を縮め、ケロッグにおいて、チームワークやリーダーシップを発揮したのだろうか?

短時間で親しくなれないから、一緒に何かする

「KCJ(ケロッグ・クラブ・オブ・ジャパン)前会長の加治さんは、誰にでもどんどん積極的にアプローチして、人と人を繋ぎます。羨ましくて、凄いなと本当に思います。自分は短時間では、相手との関係をなかなか作れません」

世の中には、短時間で人の懐に飛び込んで関係性を作り、ネットワーキングを最大限に活かせる人もいれば、苦手な人もいる。小田原さんは、「人見知り」であっても苦にならない「ある」方法で、人間関係を作った。

「わたしの場合は、なにか共通の目的や課題を見つけて、それを一緒にやっていく、という方法です。具体的な活動の中で互いを知ることができてくるし、信頼も生まれてきます」

04

チームで課題を解く

ある日、統計の課題をチームで解くように出されたとき、数学が得意な日本人は、パパっと解いた。チームのメンバーで、それぞれの解答を突き合せたとき、数学が苦手なアメリカ人の答えは、トンチンカンなほど間違っていた。

しかしメンバーは、チームとして1つの答えを選ばなければならない。こちらが正しいのは明確なのだが、間違っていると相手に英語で納得させるのは、工数がかかる作業だ。

「英語で、意見が違う相手と議論するのは凄く大変です。下手すると自分の答えは正しいのに、こちらが負けたりするわけですよ。

うまく説明できず、不本意ながらも相手の言う通りに提出すると、やっぱり間違っていた。『あー、ヒロシが言った通りだった!』と。こういうことを経験すると、自分一人でペーパーを書いた方が、マシなんじゃないかって思うわけです」

短期的な効率性を考えると、チームでやることは必ずしも良いことばかりではない。それでもケロッグでは、それをやらせる。それはなぜなのか?

05

 

「長期的に考えると、人間ひとりができる事って、本当に限られているんですよ。だから、何か大きな事をやる場合は、それぞれが持つ強みを合体させてやったほうがいいんですよ」

すべての分野で80点の人が5人集まったチームよりも、ある分野におけるスキルは100点で、残りの分野では50点という人が5人いるチームのほうが強いと、小田原さんはいう。つまり、それぞれ違う得意分野を持つメンバーが5人集まるチームなら、うまくすれば、全分野において100点となるのだ。

もちろん逆のケースもあって、ダメな点ばかりを出してしまうこともある。いかにして、互いの得意を活かしあうか、それがチームワークの醍醐味なのだ。そして、そのチームワークをこれでもかというほど実践させて、グローバルな環境下でリーダーシップを鍛え、引き上げる環境が、ケロッグの最大の魅力なのだという。

「他のビジネススクールでも似たような仕組みはあるでしょうが、チームワークを最重要視しているのはケロッグだと思います」

外国人学生を率いて、富士山へ ―クエストトリップ(KWEST)

06

ケロッグでは、チームで行動するのは授業の時ばかりではない。イベントも多くある。そのひとつがクエスト(KWEST)だ。

入学前に一週間ほど、学生同士で旅行をする。クエストを経験した小田原さんは、二年生になる頃、クエストの企画・運営側を経験した。

企画したのは、外国人を日本へ率いる「クエスト・ジャパン」。富士山に登り、温泉に入り、日本の高校生と一緒に飯盒炊飯などを通して異文化交流。生活を共にする中で、互いの常識や、考え方の違いを痛感する。

「すき焼に連れて行ったんですよ。行く前に、ベジタリアンがいるか事前に確認したところ、一人のインド人が『ベジタリアンだけど、肉も食べる』と言いました。

ところが、すき焼きが出てくると『これはもしかしたら牛肉か?』と。彼の中では牛は“神聖な生き物”であって食べ物として提供されるとは想定していなかったのです」

ビジネスの世界ではあまり感じない違いが、共に生活をしてみると山ほど見えてくる。

富士山登山では、体力・気力に乏しい参加者を脱落させないように、うまく率いて登頂をさせた。またメンバーの皆に温泉を楽しんでもらったり……事前の予想とは違う、外国人のさまざまな姿を見た。

ケロッグのイベントを通じて、職種、国といった枠を超えたグローバルなチームワークをさまざまな形で経験した。

次回、最終回は小田原さんが考えるリーダーシップ像と、KCJ(ケロッグ・クラブ・オブ・ジャパン)の今後の展望についてお伝えしよう。

取材・文責:H&K グローバル・コネクションズ
~リーダーのストーリーを世界へ~
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小田原 浩(おだわら ひろし) プロフィール
小田原 浩

自動車、重工業OEMメーカー等、数多くのクライアント企業における組織変革の支援を行う。企業の成長戦略策定から現場におけるオペレーション改善、マーケティング&セールスのケーパビリティ強化まで、幅広い分野に関し専門的知見を有する。
近年は、自動車セクターにおいて、企業に対し業績総合診断等を実施し、日本市場における成長戦略を策定。また、グローバル収益管理プログラム支援を目的としたPMOを設立し、プライシング、ディーラー管理等、各機能の改善可能性の評価を行い、鍵となる戦略を立案している。
重工業セクターにおいては、製品プラットフォームに関するグローバル戦略を策定、包括的な目標原価企画によるアプローチを導入し、グローバル規模の調達最適化プログラムを設計、1億ドル規模のコスト削減に成功した。また、新工場の設計最適化および既存設備の生産性向上を目的とした設備投資管理プログラムを立ち上げ、約1.1億ドルの設備投資関連費用の削減を実現した。
先端産業グループの中核的メンバーであり、調達および商品設計に焦点を当てたオペレーション関連プロジェクトを指揮している。また、日本企業のグローバル展開支援にも深く関与しており、日本企業の東南アジア市場進出を支援するマッキンゼーの日本・東南アジアブリッジイニシアチブを統括している。
また、マッキンゼーの人事採用および人材開発にも携わっており、東京オフィスのビジネスアナリスト採用プロジェクトの責任者も務める。

学歴
ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院(ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント)修士課程修了(MBA)
東京大学経済学部卒業

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