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グローバル・リーダーの横顔
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Interview グローバル・リーダーの横顔

ビジネス界で活躍しているグローバル・リーダーの横顔、ビジネスの最先端情報やリーダーシップの真髄に触れるインタビュー。

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「こうありたい」と思い描く自らの未来像。しかし、自分以外の人々や社会との関わりの中で、納得できる形で実現するのは難しい。そして、あるとき努力が実ったとしても、持続していくことはさらに難しい。

今回取材をお願いした大里真理子さんは、「社長になる」夢を実現し、さらに、挑戦を続けている人。相対すると、明るく、エネルギーに満ち溢れている印象だ。体を乗り出して会話をしてくださるので、取材をしている側もつい熱が入る。

高校までの大里さんは、黒板の内容をノートに書かなくてもすべて覚えてしまう天才少女だった。東京大学卒業後は日本アイ・ビー・エムをはじめとする会社で、あらゆるプロジェクトで成果を出し、順風満帆なスタートを切った。しかし、ある中国事業で手痛い失敗、そして挫折を経験。その後、見事に壁を乗り越え、翻訳サービスを提供する株式会社アークコミュニケーションズを設立した。ハーバード・ビジネス・レビューを翻訳して信用を得たり、多言語サイトを構築して事業ドメインを広げたりしながら、事業は順調に拡大。現在は、30数名を率いる会社の社長であると同時に、育児に力を注ぐお母さんでもある。

しかし、現在にいたる道のりを聞くと、意外なことに、綿密な長期キャリアプランをもとに築き上げたのではなく、半ば偶発的に出会った機会を活かしてきた結果なのだという。

そんな大里さんに、新しいことに次々チャレンジし、自分のやりたいことや夢を実現するために、必要な考え方や実践されていることをお聞きした

興味のあることは、何でもやってみる ー“将来の夢は社長”

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大里さんは、小さい頃から「いろんなことに興味を持っては、すぐにやってみる子だった」と振り返る。

学生時代のあるとき、大里さんの周りでピアノが流行り、大里さんも習い始めた。しかし、1ヵ月レッスンをして、向いていないことを悟り、ピアノをやめた。その時、大里さんが放った一言は、今も友人たちの間で語り草になっている。

「ピアノを毎日練習するのは無理。でも、東大なら毎日勉強しなくても入れるから、私はそっちを目指す」。

そして、音大ではなく、東大を受験し、ストレートで入学した。

この経験を通じて、自分はコツコツ努力するより、集中力を高めて要領よくやることが得意なのだとわかったという。結果が芳しくなかったとしても、失敗を気に病むことはなく、むしろ、やりたいと思ったことをやらなかった後悔のほうが大きかった。さらに、失敗という認識もあまりないので、「新しいことをはじめる際の心理的なハードルが低かったんですね。」と述懐する。

大学卒業後に入社した日本アイ・ビー・エムは、仕事も社風も肌に合っていた。面接時に「社長になりたい!」と発言したように、自分のキャリアに対して制限を設けず、自由に思い描いていた。しかし「いまのまま4~5年したら成長できなくなる。先のことを考えた方がいい」というアドバイスに大里さんは考えた。

自分の強みは勉強ができること。アイ・ビー・エムはアメリカ流の経営スタイルの会社なので、英語や、アメリカ流の経営学が重要となる。いずれ経営者になる準備として、ビジネススクールを志願し、ケロッグ経営大学院へ留学した。

戦略力を駆使し、成績上位10%でビジネススクールを卒業

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大里さんは、東大をストレート合格しただけでなく、米国ケロッグ経営大学院では、成績上位10%にしか与えられない、Beta Gamma Sigma Awardを受賞している。一般的に、日本人留学生は、英語の壁、教科書のリーディング・アサイメントの量、生徒間の競争等で苦労を余儀なくされる。しかし、大里さんのMBAライフにおいて、勉強は楽勝だったのでは?と質問してみると、意外な答えが返ってきた。

「そんなことないんですよ。私は帰国子女でもないし、実は、英語ではとても苦労したんです。」 そのために編み出した、英語が苦手でも生き残る戦術があるという。特別に、読者にだけお教えしよう。

「評点は、発言とレポートで付けられます。このなかで、私は発言が苦手。ヒアリングができなくて苦しいし、課題図書がものすごく多くて、読み切ることができないんです!」

そこで行ったのは、なんと「教科書を、(ほぼ)読まない」という方法である。

まず、「授業で何を発言するかを、教科書を読む前に、先に決めること」。具体的には、目次で自分のバックグラウンドに絡めて話せそうな箇所の見当を付ける。すると10~20ページくらいに絞れるので、そこだけを読むのだ。

もう一つ大切なのは、「誰よりも早く発言すること」。議論の最中に、前の発言者の意見を受けて、自分の意見を述べるのは、とても難しい。だから、一番自由に意見が言える最初のタイミングで発言し、議論の行方を見守る。これで確実に評価を得られる。しばらくすると議論の切り替え時がわかるようになり、そのタイミングで自分の意見を述べるといったテクニックが身に付くそうだ。

「先生が生徒を評価する指標を探るのがコツです。エッセンスを切り取って、オリジナリティを加えるのが得意だったから、その指標に沿って自分の意見を表現したお陰で、優れた成績を出すことができたんですね。」大里さんはそう振り返る。自身の強みと弱さを熟知し、与えられた条件下で有利に戦える作戦を立案して、実行する、まさに戦略力である。

経営者として、仕事と子育てを両立させる戦略とは

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子どもが生まれると、子育てのためにさらに時間が必要となる。時間の制約がさらに厳しくなる中、会社の業績を伸ばし、規模を拡大していくのは並大抵のことではない。MBA後のキャリアとして、「起業」を目指したり、共働き夫婦が増える中、皆が知りたいこと、それは、どのような方法で、仕事と子育てを両立したのか?という点ではないだろうか。

「うちの夫は、女性だから家事をやれ、とは決して言いません。でも、夫の独身時代の部屋には鍋ひとつなく、家事をしたことがない人でした。ですので、戦略的に二つの対策を講じました」。

一つは家事のアウトソース化。「はじめに相談したとき、夫はこのアイデアに残念ながら反対でした。50:50で半分を夫自身がやるといわれました。けれど私は半分でもやりたくない(笑)。アウトソースをベースにして、家事は趣味でやればいいじゃないかと考えたのです」。

交渉するうちに他人が家に入ってほしくない旦那様から「家事は全部自分がやる」との方向性まで提案された。しかし、それでは長続きしないし、自分も気を遣ってしまうので、その意見は承諾しなかった。結局、掃除や洗濯など、大里さんの分だけアウトソースする形でスタート。運用が始まると、「ついでにこれ(旦那様のもの)もお願いしていいよね?」と一緒にアウトソースに出すようにし、いつしか旦那様も利用するようになった。

もう一つは、子育て体制の充実。実家の近くに引っ越し、信頼できるベビーシッターを2人確保した。そして、地域のファミリーサポートにもお世話になった。「実家の協力だけでも、できたかもしれません。でも、投資だと思って万全の体制にしました」。

育児や家事に、外部の力を借りることに抵抗を感じる人もいるかもしれない。しかし、誰かに負担が偏るようでは、結局あちこちにダメージを抱えて、いずれ破たんしてしまう。これまでの概念を見直して、思い切ってアウトソースすることが、共働き家庭や、社長などの大きな目標をもっている夫婦にとっての1つのソリューションであると思えた。

多様性と自立 ー“私は私らしく、あなたはあなたらしく”

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激しく変化する世の中で生き残っていくには、その兆しを捉える感受性や打開策を考えるマインド、挑戦を続けるタフさ、そして実行力が不可欠だ。しかし、一人の人間が対応できる範囲には限りがある。そこで、複数の人材が共同で、それぞれ得意なところで変化に対応をしていくことになる。そうした多様性について、思うところをうかがった。

「単一の性質に偏ると、リスクが高まると考えています。同じ企業文化や考え方に染まってしまったせいで、不正が止められず、非常に大きな危機を呼び込んでしまう事例もありますね。いろいろな価値観や視点、知識、能力を備えた人が集まっているほうが、リスクを回避できると、私は思っています。」

大里さんは以前から、「私は私らしく、あなたはあなたらしく」という考えを持っていたという。つまり、みんなそれぞれに自分がやりたいことをやれることが理想で、それが結果として、『多様性』としての強みにつながるということだ。 「中学生のころから、私は、人と違った考え方をしていると感じていたんですね。学校でも、同級生は、なぜクラブやトイレまでも(!)、意味もなく一緒に行動するのか、不思議でした…」。

ただ、他者とつながりを作らないわけではない。取材中の姿勢にも表れていたが、より良い解を得るために、相手の求めるものを読み取る努力を常にしている。自分の考え方を独立した形でしっかり持ち、周囲に迎合した行動をしないだけなのだ。

一方で、「好きなことをして、自分らしくあるためには、『自立』が、大前提なのです」とも話す。

経済的にも、一人の人間としても、自立していなければ、自分の価値観に従った行動は難しく、夢も語れなくなる。大里さんが経営しているアークコミュニケーションズは、「スキーオリエンテーリング」等のマイナーなスポーツを支援している。それは、才能あるアスリートの経済自立を応援したいからだと、想いを聞かせてくださった。

今回のインタビューで、大里さんがこれまで高い目標を達成し、社長業と子育ての両立など、自己実現を図ってこられたのは、

・とにかくやってみるフットワークの良さ
・戦い方を自分に有利な形に捉えなおす柔軟性と戦略力
・多様性と自立を大切にすること

というところに鍵がありそうだ。

さらに、アークコミュニケーションズでは、1年間の育児休暇を取得した男性社員の事例もある。転機をうまく捉えて自身のチャンスに変え、新しいことにチャレンジしていく大里さんや同社の取組みに、今後も注目していきたい。

取材:ケイティ堀内 H&K グローバル・コネクションズ
グローバル思考の人と組織の魅力を伝えるブランド・プロデュース会社
大里 真理子 プロフィール
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1963年 生

学歴
1986年 東京大学文学部卒業
1992年 ノースウェスタン大学経営大学院ケロッグビジネススクール卒業、MBA取得  Beta Gamma Sigma Award受賞

職歴
1986年 日本アイ・ビー・エム株式会社入社
1992年 ユニデン株式会社入社
     中国にて携帯電話の販売、武漢支店長歴任
1997年 株式会社アイディーエス起業に参画 取締役、業務執行責任者等歴任2005年 株式会社アークコミュニケーションズ設立 代表取締役 

関連サイト
【翻訳・通訳、Web制作】
株式会社アークコミュニケーションズ http://www.arc-c.jp/
ブログ:マリコ駆ける! http://blogs.itmedia.co.jp/arc/

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