家族のミッション・ステートメントを構築する
倉田 進クラタ アンド アソシエーツ日本代表 / 日本AMS(株)代表取締役社長
成功するビジネスに戦略があるように、人生にも戦略があるべきです。私は、世界の仲間と仕事をする中で、いかに世間に流されず、自分らしい形で、QOL(Quality of Life)を高められるかを模索してきました。
長寿社会、グローバル社会において、リーダーとして活躍されている皆様に、人生においても成功していただける人生学を、連載でお伝えいたします。
人生戦略に必要不可欠なもの―家族のミッションステートメント
皆さんの会社には、経営の「ビジョン」や、いわゆる「ミッションステートメント」があると思います。企業におけるミッションステートメントとは、会社や従業員が共有すべき価値観、あるいは、果たすべき使命などを意味します。これらが企業の成敗を決めるほど、重要なことは、私のマネジメント経験から断言できます。
企業にとって重要であるならば、社会の最少組織体である家族にも必要ではないでしょうか。家族にとってのミッションステートメントとは、家族全員が共有しているビジョンや価値観を指します。
それは、家族の憲法となり、あらゆる物事の評価や、意思決定の基準・標準になってくれます。家族に方向性を与え、一致団結した結束力にもつながります。
我が家で実践したミッションステートメントとは
その重要性に気付いた私は、16年前位に、倉田ファミリーのミッションステートメントなるものを作成しました。それをご紹介しましょう。
・私たちは一緒にいる時も離れている時も、いつも幸せであり楽しい家族でありたい。
・私たちの家庭は、家族や友達や訪れたお客様が全て喜び寛ぎ、平安と幸福を見出す場である。
・そのために、住みやすく、清潔で秩序正しく、安らかな環境を作り出す。
・食べるもの、読むもの、観るもの、聞くもの、すること、すべてにおいて知恵ある正しい選択を行う。
・子供たちに、”愛すること””学ぶこと””笑うこと””独自の才能を発揮すること”を教える。
・私たちはいつも精神的に、肉体的に、知的に、情緒的に、文化的に、経済的に、健康的に、人間的に、毎日毎日成長することを願う家族でありたい。
これが倉田ファミリーの行動規範です。詳しくは、先般出版した本「フロリダ退屈日記 団塊定年、人生はこれからだ!」に書いています。実は、このミッションステートメントのお蔭で救われた経験がありました。
自分独自の成功の定義を持つ
息子が、高校からアメリカのボーディングスクール(寄宿生の中等教育学校)に留学をし、アメリカの大学に進学するとき、彼はアートの大学に進学したいといってきました。
親としては安全な道を選ばせようとして、
「アートでは飯は食えない。趣味としてアートをやり、アイビーリーグの大学で、ビジネスを専攻し、その後数年働いた後に、MBAを取りなさい」
と勧めました。しかし、彼の意志は益々固くなるばかりで、結局、NYにある「パースンズ *1」というアートで知られた大学に進学しました。
そうなんです。自分のミッションステートメントには、子供たちに”独自の才能を発揮することを教える”、とうたっておきながら、いざ実行となると本音と建て前の違いに猛省しました(!)。
息子は、現在もブルックリンに住み、アートの活動を続けています。ミッションステートメントに従った決断をしたお蔭で、良好な親子関係を築くことができ、彼の個性や才能を活かせるような選択をサポートしております。
私の定義する成功と、息子が定義する成功は違って当然。
大事なことは一人一人、自分自身の成功の定義を持つことなのです。
次回は、「後悔しない人生」についてお伝え致します。
*1 パーソンズ・スクール・オブ・デザインとは、1896年創立のファッションやアート専門の私立大学。世界の中でも最大の規模を誇るアート&デザインの学校として有名で、ダナ・キャラン、トム・フォード、ノーマン・ロックウェルなどの著名人を輩出しています。
著者プロフィール
クラタ アンド アソシエーツ日本代表/ 日本AMS株式会社代表取締役社長
[主な経歴・業績]
30年以上のグローバル・ヘルスケアのトップマネジメントの経験を踏まえ、東京、フロリダを拠点に国際ビジネスコンサルタント事業を展開。おもに、ヘルスケア、ゴルフ関連事業のコンサルタント、そして、退職世代の新しいライフスタイルの研究、新定年学のすすめの啓発活動を推進。日本AMS株式会社では、日本の高齢化社会のニーズに合った泌尿関連機器の日本事業を展開している。早稲田大学卒業。ケロッグ経営大学院修了(MBA)。ハーバードビジネススクールにてエグゼクティブプログラム終了(EMP)。
在日米国商工会議所(ACCJ)会員、医療機器委員会元副会長(1999-2006)、経済同友会会員、同友クラブ理事、アメリカ退職者協会(AARP)会員、米国ゴルフ協会(NGF)会員、日本抗加齢医学会会員他、東京アメリカンクラブ、早稲田二十日会等のメンバー。
[関連サイト]
日本AMS株式会社
http://www.amsjapaninc.co.jp/
[書籍案内]
「フロリダ退屈日記 団塊定年、人生はこれからだ!」
出版社:日経BP
初版発行日:2011年10月11日
倉田進(class of 1989)著
日本AMS(株)代表取締役社長
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/K03730.html