未来の楽しみを創造する
「アントレ×エンタメ」とは?
(4) 次のステップ7大予測
荻野 浩司スケールアウト株式会社 代表取締役社長
「アントレ×エンタメ7大予測・What’s Next?」
前回は、エンタテイメントがどのように変化していくのか、究極的な形の予測をしてみました。今回は、究極形に向かう途中経過にあたる「次のステップ」について、それぞれの項目ごとに考察していきたいと思います。
予測1:コラボレーションによるエンタメ:プラットフォーム確立
コラボレーションのためのコミュニケーションや制作などを備えた協業プラットフォームの“定番”として、確立されたメディアが出現するでしょう。例えば検索なら Google、協業なら○○のように浸透していくと思われます。新規事業を目指す人にとって、この分野はチャンスがあるかもしれません。
ただし、リズム、間(ま)などのタイミングを合わせるために精度の高い同期が必要となるコンテンツについては、リアルタイム実演でのコラボレーションはかなり先になると思われます。
予測2:単独によるエンタメ:プロトタイプ進化
何か新しいもののイメージを描き、実際にプロトタイプを設計するまでの過程が格段に効率化されるでしょう。例えば、誰か一人が単独で考えた一貫したコンセプトを形にして他者に提案し、検証されるまでの精度や効率がとても上がります。
ただし、プロトタイプから本格的なものに仕上げるためには、まだまだそれぞれの分野の専門家との協業が必要となり、プロトタイプ立案者にはプロジェクトマネジメント力が重要となると思われます。
予測3:ロボットによるエンタメ:人気エンタメロボットの登場
この分野は早い者勝ちです。「ふなっしー」や「初音ミク」のように、現時点の技術をうまく使い、エンタメの部分的な機能に特化した一番乗りの人気ロボットが登場し、一般的なロボットへの認知や理解を牽引するかもしれません。
実際には人間と同等な機能をもった汎用ロボットができるまでにはまだまだ時間がかかりますが、研究者や技術者の地道な努力の積み重ねにより、「技術的特異点」に向けてロボットの能力の範囲や精度は徐々に、しかし着実に上がっていくものと思われます。
予測4:データによるエンタメ:物理メディアの役割変化
日本の国会図書館では、収容スペースの枯渇によりデジタル化が進められています。生み出されるコンテンツは書籍、音楽、映像ともに増え続け、もはやライブラリーやアーカイブの蓄積手段として物理メディアは適切ではなくなり、その役割の多くを電子データが担うでしょう。今もYouTube などの大手ネットメディアにデータが集中していますが、標準化が加速するでしょう。
しかし、新興国も含めた世界のあらゆるコンテンツがネット上で整理され、簡単に視聴できるようになるのはまだ先でしょう。
予測5:サポートツールによるエンタメ:産業構造の変化
サポートツールが徐々に進化し、エンタメを取り巻くサービスが増えていきます。例えば、日本の音楽業界はレコード会社、プロダクション、出版社などの会社に分かれていますが、これからはプロモーション担当、イベントブッキング担当、配信担当、ライセンシング担当など、アーティストにとって必要なサービスがエージェントによる分業体制で提供されるという業界構造になり、それぞれ IT をうまく使うサービスが伸びるでしょう。
ただし、音楽・映画・マンガ・・・など全てのエンタメ制作に対するあらゆるワンストップ機能を持つサービスはまだまだ先になりそうです。
予測6:ユーザーによるエンタメ:コンテンツ・マーケティング
今までクリエイティブな配信は一部のメディアだけが可能でしたが、今後は視聴者(メディアのユーザー)だったあらゆる企業・組織・個人などが自己のメディア(オウンドメディア)を準備し、コンテンツ発信ができるようになります。これまでよりもはるかに安価・簡単に自分に合ったテキスト記事や、音楽・映像によるストーリー、エンタテイメントを届けることにより、ブランド向上などのマーケティングに生かすことができます。
しかし、ユーザーの目的に合った最適なコンテンツ制作はまだまだ人海戦術が多く、完全自動化には時間がかかるでしょう。
予測7:人間によるエンタメの究極化:ライブイベントの功盛
音楽業界では、年々の CD 売上の落ち込みに反して、ライブイベント市場が伸びています。これは、「その場でしかできないプレミアムな体験、一体感や生の感動が求められて」いる結果だと思われます。IT が便利になればなるほど、その反動効果としてライブは規模によらず、今後も盛り上がると思われます。
この傾向は今後も変わらないかもしれませんが、人間がより強くその本質的な重要性を意識して行動するのは、もう少し先になるかもしれませんね。
以上、いかがでしょうか。まとめると、以下のような図になります。
こうした大局観の中で見つけ出した「次のステップ」を機会として捉え、よりよい世界の実現に向けて「今」具体的に行動することが「アントレプレナシップ」なのではないかと思います。次回は、こうした「次のステップ」からピックアップする形で、私自身の取り組みの一つをご紹介したいと思います。
著者プロフィール
荻野 浩司 (Oggy: おぎー)
スケールアウト株式会社 代表取締役社長
[主な経歴・業績]
ソニーにてソフトウェア開発や技術戦略企画に携わり、様々な商品カテゴリーで必要なメディア関連技術や基本ソフトウェアなどを横断的に検討。米国シリコンバレー R&D 拠点駐在による5年半の開発や企画も経験。その後、マッキンゼーで戦略コンサルティング業務を経て、2011年にスケールアウト(株)を起業。音楽関係の企画制作、テクノロジー関連のコンサルティングなどを展開。アントレプレナシップとエンタテイメントを融合させた独自コンセプトに基づき活動中。
神戸大学工学部修士課程卒(1994年)。Kellogg (ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院) MMM プログラムにて MBA (経営修士号)と MEM (技術マネジメント修士号) のデュアル学位(2009年)。
ミュージシャン Oggy (おぎー) としても精力的に活動中。ギターを手に、定期的にジャズやブルースなどのジャムセッションに出没。オリジナル曲などの弾き語りパフォーマンスも行っている。
[関連サイト]
スケールアウト株式会社 :
http://www.scaleout.tv
Oggy ウェブサイト :
http://www.oggy.net
Oggy フェイスブック :
http://www.facebook.com/oggy8
Twitter : https://twitter.com/oggyoggy
インタビュー (クロスサイトプラス) :
http://home.xsightplus.com/interview/interview005