近代マーケティングの父 フィリップ・コトラー教授の知られざる魅力

グローバル・リーダーの視点
未来に対して「YES」と言える日本―謙虚さ、自信、イノベーションそしてロボットロバート・ウォルコット
ケロッグ経営大学院の改革に学ぶ (4) 長期にわたる改革者ジェイコブス鳥山正博
ケロッグ経営大学院の改革に学ぶ (3) ケロッグスクールは、卒業生・在校生が入学者を選ぶ?鳥山正博
ケロッグ経営大学院の改革に学ぶ (2) ケロッグ校が個人間の競争から脱却した理由鳥山正博
ケロッグ経営大学院の改革に学ぶ (1) 変革リーダー、ドン・ジェイコブスの素顔鳥山正博
未来の楽しみを創造する「アントレ×エンタメ」とは? (5) 取組例「コンテンツ・マーケティング」荻野 浩司
未来の楽しみを創造する「アントレ×エンタメ」とは? (4) 次のステップ7大予測荻野 浩司
未来の楽しみを創造する「アントレ×エンタメ」とは? (3) 究極形の7大予測荻野 浩司
未来の楽しみを創造する「アントレ×エンタメ」とは? (2) なぜエンタメか、何が変わるのか荻野 浩司
未来の楽しみを創造する「アントレ×エンタメ」とは? (1) 時代の変化と生き方荻野 浩司
Kellogg School of Management
ケロッグ経営大学院のご案内
ケロッグ経営大学院について
ケロッグ・クラブ・オブ・ジャパンについて
書籍紹介
掲載メディア紹介

Column グローバル・リーダーの視点

各界の第一線で活躍するグローバル・リーダーが業界の最新情報の提供や、独自の視点で分析、提言するコラム。隔週にて連載しています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

第3回:「社会の幸せがお金に通じる」
-経営の黄金律

伊藤 武志
株式会社価値共創 代表取締役

私は前章で、自分の使命に出会うことが出来たと語った。次は、その使命をどのようにして実現するかである。ビジネスとして使命を全うしようとする以上、そこには貨幣価値が必要だ。それなくして使命の達成(=ビジネスの成功)はあり得ない。

実はこの世には、お金とうれしさが出会う大事な瞬間がある。『顧客を創る』とドラッカーがいい、『有効需要の創造』とアダム・スミスがいった瞬間である。それはニーズとモノの出会うところである。それを欲する人が、欲する気持ちを満たすモノを手にしたときの喜びこそ、貨幣価値がうまれる瞬間なのだ。

そして、この素晴らしい瞬間にうまれた貨幣価値によって、世の中は支えられている。生まれたお金は、会社の今日の活動と、将来への投資、さらには社員や社会、取引先、株主に分けられる。お客さまが喜びの対価として払ってくれるこのお金をおいて他に社会を支えられるものはないのである。寄付もこのお金から出ているし、お金をもらわずにボランティアだけで生きていけることもない。ビジネスはすなわち、社会貢献そのものなのだ。

すべての人が消費者・生産者として共有すべき価値の創造

NPO関連の場で司会

現代の消費はソーシャルメディアの発達により、消費者、生活者が十分な情報を手にし、それをもとにモノやサービスを選ぶという時代になってきている。だから私たちが消費者としての立場をとるとき、企業からの偏った情報に踊らさせることなく、活者主権でよい商品を選ぶことができる。そこで、個々人のボトムアップの意識が社会を動かす重要な行動となってくる。

いくらその商品が安くても、法令や倫理に反する行いがあればよい商品とはいえない。社員を使い捨てたり、ただ利益だけを追求・独占しているような企業はすぐに情報が流れるのだから、そうした企業の商品は決して選ばない。少なくとも我々消費者がこの価値観(安さだけを追い求めない、適正な価格で買う、法令や倫理に反する行いのある会社からものを買わない)を共有することで、必然的によい会社だけが生き残るようになる。よって、よい経済社会を自分自身が創りだせるのだ。

我々は生産者としての価値観も共有すべきだ。顧客との共創が行なわれるような世の中にあっても、やはり生産者こそが、顧客のニーズを先取りして価値を提供していくことが王道である。今世の中に存在しないモノについて顧客に聴くことはできないのだから、自分が将来の顧客になりきり、ものづくりをしていくのである。もちろん、市場を破壊するような価格競争は極力避ける。もし、ある企業が創意工夫によってコスト競争力を得ることができたなら、そこに適正なマージンをのせて販売して欲しい。それこそがデフレ対策に繋がるわけだ。

顧客であり生産者でもある私たちには、社会を支え、変える力がある。顧客としての自分と作り手としての自分が社会を支え、救うことができる。

また、世の中に蔓延する『金儲け=悪』のイメージを払拭しなければならない。一生懸命モノをつくって対価を得ることはうれしさの受け渡し=尊い行為なのである。だから、嫉んだり、成功者の転落にほくそ笑むようなネガティブな感情を消し去ることが必要だ。石田梅岩、渋沢栄一も、『金儲け』を一生懸命肯定してきた。もちろん、誠意や信頼、ルールに基づいて商売をして、そこでお客さまに喜ばれ、支持されて儲かり、その儲けを社会や社員、取引先に分けるという誠実さがある場合に限られるが。

「うれしい経営」の実践

企業研究会でグローバル商人道の論文で賞

さてそういうわけで、現在の私の挑戦は、「うれしい経営」の実践である。過去と今のうれしいことを振り返り、それを大事に、前向きに捉えて、将来のうれしいことを思い描き、創っていくということを企業の現場で実践していくのだ。

その中で、我々市場参加者はマーケットのパイが広がるような努力をし、ルールを守り、きちんとコストプラスの価格を設定し、その下で健全な競争を行なうことで、お金を生んでいく。そしてそのお金を分けていく。これが『うれしい金儲け』である。

今、私の専門は?と聴かれれば、コンサルティングのキャリアから始まった経営管理と答えることになる。経営分野では、よく「測定できないものは管理も改善もできない」といわれるが、私は今、顧客と社員の『うれしさを数える会計』を提唱している。うれしいと感じる機会を、顧客としての自分、社員としての自分に増やす。そしてそれがお金儲けに繋がるような工夫を徹底する。もちろんその金儲けは、お客さまからいただくあがりであり、社会のためのお金である。株主だけのためでも自分ためだけでもない。みんなのためのお金儲けである。

主催の勉強会で司会

弊社は小さな会社だし、社会も経済の先行きも見えない。けれども、すでに大切にしたい価値は見つけている。そして、ケロッグが長い歴史のなかで大切にしてきたリーダーシップとチームワークという価値観、それを体現する多くの人財に支えられて、お客さまのうれしい金儲けを支援していきたい。

著者プロフィール
伊藤武志

伊藤武志
株式会社価値共創 代表取締役
1994年ケロッグ卒業

[主な経歴・業績]
銀行での経験のあと、コンサルティング会社を経営し、
15年間、戦略立案、経営管理、組織開発、人財育成の業務・研究に携わる。
共に、この瞬間を生きていることに感謝し、幸せに思いつつ、
勇気を持ち、助け合いながら、現実を直視し、夢を描き、
あきらめずに行動し、生まれた価値を分かち合うこと、
そして魅力的な人々のあふれる魅力的な組織・社会を創り、
一人あたりの名目と実質のGDP、給料と幸せを増やしていくための
うれしい経営を実践し広げることを大切に思っています。

一般社団法人企業研究会 戦略スタッフ研究フォーラム 研究協力委員
車座の会 主宰

[主な著書]
著書として、
『実務入門事業計画書のつくり方』(共著)
『図解でわかるソリューション営業』(共著)
『バランスト・スコアカードによる戦略マネジメント』
『図解でわかる技術マーケティング』(共著)
翻訳書として、
コーキンス著『実践ABCマネジメント』
アンダーソン/ジョンソン著『システムシンキング』
ハチェンス著『エミーとレニー 2匹のねずみのお話』
ドーン・イアコブッチ他著『マーケティング戦略論』(共訳)
ロビネッティ/レンツ/ブランド著『エモーションマーケティング』(共訳)
ウルリヒ/カー/アシュケナス著『GE式ワークアウト』(共訳)
マクグラス著『プロダクトストラテジー』(共訳)
ウルリヒ・ブロックバンク著『人事が生み出す会社の価値』(共訳)
キャプラン/ノートン著『バランスト・スコアカードによる戦略実行のプレミアム』(共訳)
がある。

[関連サイト]
株式会社価値共創 ウェブサイト http://www.valuecocreation.co.jp
伊藤 武志 フェイスブック http://www.facebook.com/itotakechan

Comments