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グローバル・リーダーの横顔
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Interview グローバル・リーダーの横顔

ビジネス界で活躍しているグローバル・リーダーの横顔、ビジネスの最先端情報やリーダーシップの真髄に触れるインタビュー。

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今回は、日本交通株式会社 代表取締役社長の川鍋一朗さんをご紹介します。川鍋さんは、創業80余年の歴史を持ち、売上高日本一のタクシー・ハイヤー会社『日本交通株式会社』の三代目社長です。華々しいバックグランドですが、社長就任と同時に1900億円の負債を背負い、その後、さまざまな手法で見事に会社再建を果たされました。また、彼の著書である『タクシー王子、東京を往く』を通じて、彼の魅力を探ってみました。経営者としての視点に興味がある方、沢山の学びをご期待ください。

映画のようなストーリーのある人生を選ぶ

川鍋さんは、なんと、若干29歳で、取締役として入社し、34歳で、代表取締役に就任されました。それまでは、慶応大学での学生生活を謳歌し、コンサルティング業界のトップ企業であるマッキンゼー・アンド・カンパニーでのキャリアを経験されています。

長身でイケメン、笑いのセンスにあふれた社交家。別名「タクシー王子」とも言われています。誰もが華麗なライフスタイルしか想像できません。でも、川鍋さんは、若くして、大変な重荷を背負っていたのです。

まず衝撃的な社長就任を経験されています。2代目社長である父親が、突然血を吐き入院し、その当日に、社長就任が決定。また、その翌日には、大切なお父様を亡くされました。

大会社の社長に、若干34歳という年齢で、引き継ぎも十分になされないまま就任、そして直後に大事な家族を亡くすという現実。かなり強靭な精神力を求められたはずです。プレッシャーも相当だったでしょう。

社長就任時の大きな課題、それは、1900億円の負債でした。バブル成長時代に拡大した不動産や本業以外の投資が主な原因でした。

彼は、先代社長に仕えてきた社内のブレインや社員、弁護士、銀行と協力し、ほとんどの資産を売却しました。かつては、麻布に大きな邸宅を構えていて、私も訪問させて頂いたことがあります。邸宅内にはエレベーターがあった程でした。でも、その邸宅も処理されました。そして2005年に、見事V字回復を果たしました。

さらにすごいのが、2007年大晦日から、1か月社長を休業し、タクシー運転手として勤務された事です。社内のスタッフや関係者は、かなり動揺したし、ブーイングもおきました。中には、「1か月運転手になるということは、社長なんか必要ないのではないか」といった中傷までありましたが、彼は誰が何と言おうと決行しました。

逆境を超えて成功を勝ち取ったり、普通の人がやらないような事をやって人を驚かしたり。また、現状維持ではなく、敢えて革新的な道を選んでいます。

自分のブランドを持っている人というのは、自分のストーリーを持っています。映画のように、人々の心の驚きや感動を与えるストーリーです。川鍋さんは、生い立ちはもちろん、自らもストーリーを作っている人だといえるでしょう。

長期的な視野に立ち、タクシー運転手を実践

このように、川鍋さんは、2007年大晦日から、1か月社長を休業し、運転手として勤務しました。著書を読むとわかりますが、一日16時間勤務というタフな業務です。しかも、彼は、自他ともに認める地理音痴(!)でした。

なぜ、彼は、運転手としての経験を選んだのでしょう。
著書には彼の重要な言葉が輝いています。

「創業者である祖父の川鍋秋蔵は、お抱え運転手として10年間自分でハンドルを握った。初代を100とすると、今の自分の現場感覚は1くらいである。次の30年を見据え、三代目の自分に、今一番必要なものは何か? それは恐らく、現場感覚であろう。」

ケロッグ経営大学院のMBA取得者は、卒業後、経営者や経営的な視点で業務をする事は一般的です。しかし、ほとんどが営業やオペレーション業務など現場業務に従事する時間やチャンスもなく、いきなり企画や経営的判断を要求されることが多いのです。でも、皆、現場を知ることが大事であることは痛感しています。

そうです。川鍋さんは、現場感覚があるとないのとでは、その後の経営判断のレベルに雲泥の差がでてくることを知っていました。また、会社を30年という長期的視野で捉えており、その成長のためには、1か月が必要だと考えられたのです。

川鍋さんのブレイク・スルー、それは、このタクシー運転手としてのプロセスを1か月しっかり経験し、多くを学んだことにつきると思います。

粘り強い挑戦と、徳を核にした社是

川鍋さんの社内でのチャレンジが、滞ることはありません。社長就任後にリストラクチャリングを決行したときも、1か月のタクシー勤務を発表したときも、また、黒タク等の新サービスを導入したときも。

特に、若い年齢で役員になったからか、タクシーという古い業界だからか、常に社内からの反発、抵抗は相当なものでした。

たとえば、社内通信で「車内温度を26度に保とう」と書くと、
「イチローさん、あなたが一番暑苦しい。あなたがいなければ、日本交通はクールビズ」
といった調子です。

このような批判・中傷を含めた現場の声に対して、川鍋さんは、うまく感情をコントロールし、相手の立場を理解しながらも、前向きなディスカッションを粘り強く続けました。ユーモアのセンスを忘れず、チャレンジ精神を持ち続け、常に感謝の気持ちを持ち続けました。

また一か月の運転手勤務もこなしました。運転手としての任務は相当ハードです。道を間違っても、トラブルにあっても、自分を笑う余裕。よし、次は絶対に目標をクリアするぞという向上心。お客様一人一人に対する感謝する心。営業収入(一日の売上)が少しでも伸びた時に感動する心。

小さな事のようですが、これらの前向きな考え方が、経営者として、リーダーとして大事な気質ではないでしょうか。また、情熱や信念がなければ、絶対に乗り越えられません。

また、著書に、会社再建に関わった弁護士の清水先生の素敵な言葉を見つけました。

「自分がやってきた何百件という案件の中で、日本交通の案件は五指に入るほどうまくいった。なんでか分かりますか?
君はがんばった。私もがんばった。だけどそれだけじゃ、ここまでうまくはいかない。この会社が過去に積み上げてきた徳があったから、もう一回チャンスを与えられたということなんだ。
先人が遺した徳が、今の日本交通を救った。だから、会社が復活したら、君はもう一度徳を残さなければいけないよ」

そして、川鍋さんは、社会に「徳」を残すことを使命とし、新しい社是を作成されました。

社是 「徳を残そう」
桜にN、日本交通に集う私達は、
誇りを持って働き、
高い業績を上げ、
物心両面の幸せを実現して更に誇りを持って働き、
以って仕事を通して後世に「徳」を残すことを、
その経営理念と致します。

皆に愛され、応援されながら、タクシー事業の発展に取り組んでいる川鍋さん。彼を通じて、タクシー会社の中にも、高いモラルを持って、高品質なサービスにこだわる素敵な会社があるということがわかりました。

詳しくは川鍋さんの著書「タクシー王子、東京を往く」を読んでください。また東京に来たら、ぜひ、日本交通をご用命くださいね!

取材:ケイティ堀内 H&K グローバル・コネクションズ
ヒト・ブランディングのための国際マーケティング・エージェント
関連サイト

日本交通株式会社
http://www.nihon-kotsu.co.jp/
日本交通株式会社 社長挨拶
http://www.nihon-kotsu.co.jp/about/greeting.html
著書「タクシー王子 東京を往く」
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784163701806

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