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未来の楽しみを創造する
「アントレ×エンタメ」とは?
(2) なぜエンタメか、何が変わるのか

荻野 浩司
スケールアウト株式会社 代表取締役社長

なぜエンタテイメントか

なぜ私がエンタテイメントにこだわっているのか、なぜ音楽関連の活動をしているのか、よく人に尋ねられますが、なかなかうまく答えられません。なぜなら、エンタテイメントは人の心を癒すなどといった手段としての側面もありますが、私にとっては、エンタテイメントそのものが目的だと思うからです。

例えば美味しい料理を「食べたい」と思って食べるのと同じように、音楽そのものが「目的」となるのです。音楽を聴いたり演奏することによって、特別なフィーリングを得ることができ、人生の豊かさを感じることができます。

音楽業界のビジネスやマネジメントを手掛ける内に、自分自らが、メロディやリズムや音色など、「音楽そのもの」を制作・演奏してみたいと思うようになりました。この軸がないと、エンタテイメントという仕事が空洞的な活動となってしまうということに気づいたのです。

そして今では、自分なりに一人の演者として演奏をしたり、曲を作ったりする機会が大幅に増えています。その結果、ミュージシャン仲間が増え、クリエーターとしての視点で音楽業界への発見もあって、楽しみが増えています。

column_08-2_1 社会全体の視点に立ってみても、エンタテイメントは「手段」よりも「目的」として捉えられた方が、存在意義は高まるのではないかと私は考えます。例えばマズローの要求階層説では、物理的要求(飢餓など)、安全面の要求(紛争など)などを克服した後に、人は自己実現や創造性発揮など、より高次な目標達成を求めると説明されています。文明が発展し、インフラが整い、平和が確保された後には、いよいよエンタテイメントは、余暇を過ごすための「手段」ではなく、「目的」としての第一義的な存在となり得ると考えます。しかし現実には、世界の全ての人が純粋に本来的なエンタテイメントを楽しむことができる時代にはまだ遠く、人類は多くの問題を抱えています。世界中の人々にエンタテイメントを心から楽しんでもらうために、現代ならではの役割があるはずなのです。

エンタメで何が変わるか ― テクノロジー

第1回目の記事では、人類全体の歴史の流れの中で、情報革命とグローバル化が大きな変化ポイントであるという話をしました。これらはエンタテイメントにも大きな影響を与えています。なぜなら、エンタテイメントの多くは映像・音楽・書籍・ゲームなどであるため、「情報」と捉えられるからです。これらは全て0/1 のデジタル信号として取り扱うことができ、情報テクノロジーによって処理されます。

この情報革命によって、かつてはフルタイムで働けなかった映画監督、ミュージシャン、デザイナーなどに、大きなチャンスが到来しました。これまで大手制作スタジオでしか使われなかったような高性能な録画・録音機材、編集機材などは、一般の市民にも手の届く範囲の価格になってきています。これにより、ある程度高いクオリティの作品を誰でも簡単に生み出せるようになり、いわゆるプロとアマの境界が曖昧になり多様な作品が生まれています。

こうした変化によって、個人が全ての制作プロセスに関わり、一貫した作品をプロデュースできるようにもなりました。また、これまでは一部の大手スタジオやレコード会社が CD や DVD を制作することで作品を広く流通させていましたが、昨今のインターネットの普及により、ダウンロード配信、ストリーミング配信など、誰もが安価で容易に作品をリスナーに届けることができるようになりました。

さらに、音楽を聴いたり演奏するためのツールは、より便利かつ高品質になり、自動演奏の技術などもさらに高度化していくと考えられます。究極的な未来では、演奏を自動化させることができるかもしれませんが、私は、人は演奏をやめないだろうと考えます。車が発明されても、人は走ることを止めないのと同様に、音楽を演奏することは、人間に必要な基本的欲求だと考えるからです。その本質的な目的感は維持されつつ、テクノロジーにより、演奏技術やパフォーマンスは進化していくのではないかと考えます。

エンタメで何が変わるか? ― グローバル化

ジャズなどの音楽は、色々なクラブやライブハウスで「ジャムセッション」が行われています。よく知られたスタンダード曲を中心に、参加ミュージシャンがその場で演奏し、即興的に共演するというものです。レベルの高いミュージシャンが中心のジャムセッションから、初心者から熟練者まで、あらゆるレベルのミュージシャンが参加できるジャムセッションまでさまざまであり、私もありがたく参加させてもらっています。

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音楽には異なったバックグラウンドの人がすぐにコミュニケーションできるという側面があります。ジャムセッションを通じて、私も色々な分野の友人に沢山出会えました。さらに、演奏者とリスナーの間にも色々なメッセージのやり取りがありえます。グローバル化の世界における音楽の役割のひとつは、国を越えて、多種多様な人がさらにコミュニケーションできることだと私は考えます。

さらにテクノロジーの進化によって、世界の多様なエンタテイメント・コンテンツはグローバルに配信されるようになっています。かつての日本の音楽業界は、日本国内で制作されたものを日本国内のマーケットで展開する地産地消が大部分でした。ところが今やリスナー層は世界中に広がっています。また逆に、日本ではなじみの少なかった中東やアフリカ圏などの独特でエキゾチックな音楽も簡単に聞けるようになりました。

例えば、日本からも海外に向けて、映画・音楽・アニメなど様々な日本のコンテンツを紹介するJapan Contents Showcase というイベント (2014年は10月にお台場で開催) が行われています。こうしたイベントを通じて、エンタテイメントに関するさまざまなパートナーシップも国を越えて行うことが可能になり、まったく新たなビジネス展開を創り出すことができるようになりました。私もこうした機会を通じて、日本の音楽を他国の方々にプロモートし、具体的な協業の話をさせていただいています。

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このように、「目的」としてのエンタテイメントは、情報革命やグローバル化などの時代の流れに影響されて新しい方向性を形作ることができます。
次回は、こうした流れの中で、どのような変化がありえるのか、私自身の考えを述べていきたいと思います。

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著者プロフィール
荻野浩司

荻野 浩司 (Oggy: おぎー)

スケールアウト株式会社 代表取締役社長

[主な経歴・業績]
ソニーにてソフトウェア開発や技術戦略企画に携わり、様々な商品カテゴリーで必要なメディア関連技術や基本ソフトウェアなどを横断的に検討。米国シリコンバレー R&D 拠点駐在による5年半の開発や企画も経験。その後、マッキンゼーで戦略コンサルティング業務を経て、2011年にスケールアウト(株)を起業。音楽関係の企画制作、テクノロジー関連のコンサルティングなどを展開。アントレプレナシップとエンタテイメントを融合させた独自コンセプトに基づき活動中。
神戸大学工学部修士課程卒(1994年)。Kellogg (ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院) MMM プログラムにて MBA (経営修士号)と MEM (技術マネジメント修士号) のデュアル学位(2009年)。
ミュージシャン Oggy (おぎー) としても精力的に活動中。ギターを手に、定期的にジャズやブルースなどのジャムセッションに出没。オリジナル曲などの弾き語りパフォーマンスも行っている。

[関連サイト]
スケールアウト株式会社 :
http://www.scaleout.tv

Oggy ウェブサイト :
http://www.oggy.net

Oggy フェイスブック :
http://www.facebook.com/oggy8

Twitter : https://twitter.com/oggyoggy
インタビュー (クロスサイトプラス) :
http://home.xsightplus.com/interview/interview005

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