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リーダーシップを身近に考える (5)
下積み時代からのリーダーシップ実践法

岸本 義之
ブーズ・アンド・カンパニー株式会社 ディレクター・オブ・ストラテジー 早稲田大学 大学院商学研究科 客員教授
ビジネスにおけるリーダーシップとは、早いうちの成功体験と、それによる自信によって形成されるということは、この連載で何回か紹介してきました。一方で日本の大企業には、フォロワー的人材が集まりやすく、そのフォロワー気質をさらに強めるようなカルチャーがあるということも指摘してきました。では、そうした中で若手社員がリーダーシップを身に付けるにはどうすればよいのでしょうか。

解決すべき問題を積極的に探す

 日本の大企業には、大小さまざまなレベルの問題が堆積しています。職場で何らかの役割を与えられ、その役割を遂行しようとすれば、様々な問題に突き当たるはずです。もし、何の問題もなく業務を行えるとしたら、それは過去の担当者たちが解決してきたからかもしれません。しかし、その当時と現在では事業環境も異なっているでしょうから、新たに別の問題が発生している可能性があります。自分の役割に関して、どんな問題が起きているか(もしくは起こりそうか)を認識できるかどうかがまず必要です。

 以前に、ある大企業で、各地の支店の総務の仕事を効率化するためにヒアリングしてみたところ、いくつかの支店では、支店独自のツール(例えばエクセルの関数やマクロを使って、必要な情報を入力すると、数種類の社内申請用書式が自動で作成できるもの)を作っていました。また、支店内で独自の早見表(○○が起きた時は、規程集の××をみて、△△の申請を行う)を作っているところもありました。日常の仕事の中でも、解決すべき(解決可能な)問題を見つけ出してツールを作った人と、その問題を見過ごしてしまった人がいたわけです。

 こうした問題を見過ごしたとしても、誰からも何も責められません。しかし、そういう人は、残念ながらビジネスのリーダーにはなれません。問題に気付いていながら、解決策を考えつけなかった人も、ビジネスのリーダーにはなれません。総務の仕事に限らず、営業も、開発も、生産も、問題をみつけ、解決することの積み重ねで、業績が向上していくわけです。大企業の若手社員の多くは、上司や先輩から言われたことをそのままやっていれば褒められるわけですが、それでは単なるフォロワーのままです。言われたことに関しても「本当にそうかな」「なぜそうなのかな」という問題意識をもつことが、フォロワーから脱する第一歩です。

言いだしっぺになる

 問題に気付き、その解決案を考え付いたとしたら、それを上司や同僚に提案し、実際の行動に移すことが必要になります。その提案内容がよければ、上司は「では、君がそれをやりなさい」と言ってくれるでしょう。過去の誰もが見過ごしてきた問題は、たぶん面倒なことなので、他の人に振ってもうまくいかないからです。自分一人の役割分担の範囲内でできる改善であれば、その提案通りに業務改善を成功させることで、自分の自信につながります。些細なことでも、自力で問題を解決することが自信の裏付けになります。

 但し、部内の同僚や他部署の仕事も変えなければいけない場合は、難易度が上がります。生産現場であればQCサークルなどで他の係と一緒に改善にあたれるのですが、ホワイトカラーの仕事では、そういう場もあまりありません。部署をまたがったプロジェクト・チームを組むことが必要になりますが、そうなると上司が何人も関わる面倒なことになります。また、部署間のコンフリクトが起こりやすいので、コンフリクトを避けたがる人は、そのプロジェクトすら認めてくれないかもしれません。

 しかし、ここでコンフリクトを避けるような人は、やはりリーダーにはなれません。言いだしっぺになるということは、コンフリクトをあえて起こしてでも問題を解決しようということなのです。とはいうものの、そのコンフリクトを起こしに行くには、ある程度の重みのある役職の人でないと、相手方の部署も話を聞いてもらえないでしょう。自分がそういう役職についていれば問題ないのですが、そうでない場合は、上司を巻き込まないといけません。

上司を巻き込む

 そこで問われるのが、上司を巻き込む能力です。これの有無が、大企業の若手社員がリーダーシップを発揮できるかどうかの最大の分かれ目になるといっても過言ではありません。何しろ、自分が出世するまで待っていたら長い年月がかかってしまい、その間にフォロワー気質に染まってしまうからです。若いうちに、自分の考える問題解決策を実行に移せなければ、リーダーシップは磨けないでしょう。

 上司を巻き込むためには、まず上司を観察することが必要です。既に問題を認識し、その解決の必要性を感じている上司であれば、ストレートに提案を持っていけばよいでしょう。問題をまだ認識していないものの、その解決の必要性については理解してくれそうという上司の場合は、問題意識を共有する(もしくは刷り込む)ことが必要になります。問題解決の必要性を理解できそうにない上司の場合、上司の上司(もしくは上司の右腕)を巻き込んでおいて、「○○さんが言うなら仕方ない」という状況に持ち込む必要があります。周囲の誰も理解できそうにないという場合は、さすがにあきらめて次の異動を待たざるを得ないかもしれませんが。

 巻き込むべき上司が見つかった場合は、問題解決のアプローチや作業状況をこまめに相談しに行くことが重要です。「もう後は任せたから」と言われても、追いかけていくべきでしょう。一言でも二言でもアドバイスの言葉を得られれば、(もちろんその中身も役に立つはずですが)同じ船に乗っているという自覚を持ってもらえ、他部署から文句が来たときにも防波堤になってもらえる可能性が高まります。仮にプロジェクトが暗礁に乗り上げても、一緒に責任を取ってもらえるかもしれません。

 こうして上司を巻き込みながら、徐々に大きなレベルの問題解決に成功するようになれば、自分も自信をつけられますし、周囲からも「この人に任せてみよう」「この人についていこう」と思ってもらえるようになるでしょう。問題の難易度が上がれば上がるほど、自信を持った言動をとれる人が実質的なリーダーになるのです。肩書きがなくてもリーダーにはなれます。肩書きが付いたら威張ってやろうと思っている人は決してリーダーではありません。むしろ肩書は後からついてくるものだと思っていた方がいいくらいです。

 ちなみに、下の図は、下積み時代から始まる「リーダーシップすごろく」です。2の段階を通過し、3の段階にたどりつければ後は順調で、最後は(京セラの稲森さんや日産のゴーンさんのように)リーダーシップを買われて他社の社長になるというものです。(1の段階から6の目を3回出さないと4の段階にたどり着けないというところが苛酷なのですが、そこが最難関だというのが、現実の世界なのです)

 

リーダーシップすごろく

 ビジネスとは問題解決というスポーツだと考えるとわかりやすいかもしれません。どんな業種のどんな職種であっても、問題解決に取り組まざるを得ないという点は共通しています。最上級生になって威張ることを目指すのではなく、下級生のうちにレギュラーの座を実力で奪いとれるように技量を高め、場数を増やすことを目指すべきでしょう。そうすれば最上級生になるころには、名実ともにリーダーになっているはずです。

 

 岸本義之さんによるコラムは、これで最終回です。

著者プロフィール
伊藤武志

岸本 義之(きしもと よしゆき)
ブーズ・アンド・カンパニー株式会社 ディレクター・オブ・ストラテジー
早稲田大学 大学院商学研究科 客員教授

[主な経歴・業績]
1986年 東京大学経済学部卒、日本ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン入社。’91年からKellogg (ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院)に留学しMBA取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(PhD取得)を経て現職。20年以上にわたって、戦略や組織に関わるコンサルティング・プロジェクトを多数行ってきた。著書に『メディア・マーケティング進化論』(PHP研究所)、『金融マーケティング戦略』(ダイヤモンド社)など。

[関連サイト]
ブーズ・アンド・カンパニー株式会社
http://www.booz.com/jp/home/about/leadership/yoshiyuki_kishimoto
ザ・ライト・ファイトの紹介
http://www.booz.com/media/file/mj20_02.pdf

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