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リーダーシップを身近に考える (3)
外資に行くとリーダーシップが身につくのか?

岸本 義之
ブーズ・アンド・カンパニー株式会社 ディレクター・オブ・ストラテジー 早稲田大学 大学院商学研究科 客員教授

 ビジネスに必要なリーダーシップの形成には、ビジネスにおける「早いうちの成功体験」が重要なのではないかということを、AKB48の初期メンバーとジャイアンを例にとりながら前回まで考えてみました。日本の大企業は入社時点でフォロワー気質の人を集める傾向があり、入社後も下積み期間が長期化しているという危険性も指摘しました。では、外資の世界はどうなのでしょうか?

変わり者が集まってきた職場

 私自身は大学を卒業してすぐ、当時スタッフ10数名というブーズ・アレン・アンド・ハミルトンの東京オフィスに(開設3年後の1986年に)入社しました。この頃に新卒で外資に進むというのは相当の変わり者で、いわばAKB48の初期メンバーの様なものです。東大から外資系投資銀行に新卒入社した同期も何人かいたのですが、今では各々に大成功しています。東大には一学年3000人以上もいるわけですから、こういうチャレンジャー気質の人も数人程度はいたようです。

 入社直後から私は新卒採用担当をやっていたのですが、受けに来る学生はみんな変わり者でしたから、その中から頭のよさそうな人を選んでいました。しかし、コンサルティング会社の認知度が上がってくるにつれ、変わり者ではない学生も増え、「日銀にするかコンサルにするか迷っています」という、(私からすると)ありえない迷い方をする学生が来るようになってしまいました。フォロワー気質の人には入ってほしくなかったので、そういう学生はお断りしていました。

 なぜ、フォロワー気質では困るのかというと、「言われたことをやる」だけでは仕事が回らないからです。最若手のメンバーはローデータを集めてそれを分析するのが主な役割ですが、大量のデータに接しているからこそ見えてくる仮説というのが意外に重要なのです。シニアなメンバーは他社や他業界での経験から一般的な仮説を立てる傾向があるのですが、それが反証されてしまうことも結構あります。「上司の立てた仮説は否定できない」などと考えていてはダメで、むしろ「この仮説は反証されました。なぜなら、、、」とデータに基づいて議論することが必要なのです。

 私と同世代の同僚は当時、「マネージング・アップ」といって、部下が上司をいかにうまく使うかという生意気なことを言っていたのですが、最近はそういう風潮も薄れています。とはいうものの、自分で仮説を考えて検証するというのが問題解決の本質ですから、最若手であっても「言われる前にやる」という行動が今も求められています。

どうやって自信を身に付けるのか?

 私がまだマネジャーになる前のことですが、「次に始まる銀行プロジェクトの支店後方業務のパートにA君を入れてもらえないだろうか」と頼まれたことがあります。A君は新卒入社2年目でしたが、前回のプロジェクトでうまくいかずに自信を喪失していました。その支店後方業務パートでは、パイロット支店で女子行員から聞き取りをして事務フローを解明し、女子行員とミーティングをして改善点を議論し、新たな業務分担を作るというタスクが重要でした。A君は(イケメンだったことも手伝ってか)女子行員たちの信頼をすぐに得て、支店長や副支店長が理解できなかった事務フローの改善点を、いくつも発見したのです。

 すると支店長が「いやあAさん毎日ご苦労様、女子行員達と一緒に夕食をごちそうしますよ」と何度も誘ってくれるようになりました。約半分の人数で業務を回せるという体制を作り上げることができ、プロジェクトは大成功に終わったのですが、これで自信をつけたA君はその後、順調に成長を続け、数年後にはマネジャーに昇進しました。

A君の担当した業務改善プロジェクトの概要

 若い頃に自信をつける経験のできたコンサルタントは、その後の成長が早まり、さらに自信がつくため、より早く成長していきます。逆に、自信をへし折られるような経験もあります。コンサルタントになる人には元々自信家が多いのですが、難しい仕事なので、自信をへし折られることはむしろ普通です。そのときにディフェンシブな態度(「自分が悪いのではなく、××のせい」)を取る人は悪循環に陥りやすのですが、謙虚に学び取る(「あの人のあのやり方は参考になりそうだ」)人は立ち直りも早いようです。

 コンサルタントは、クライアントのメンバーもリードしなければなりません。社内的な権威・権限のある役員とは違い、社外から一時的にやってきたコンサルタントがメンバーをリードするには、問題解決の方向性を納得感の高い論理構成で説明できる能力が必要です。つまり、分析力、論理力、コミュニケーション力という武器のみでリーダーシップを取らなければならないのです。
 
 しかし、それでは「生意気な若造」という反発をくらいやすいのも事実です。「能ある鷹は爪を隠す」ではありませんが、適度に謙虚で控えめなくらいの方が、結果的にクライアントの信頼を勝ち取ることが多いのです。そこで重要になるのが、自信を持っているかどうかです。自信があればこそ、余裕のある態度で接することもできますし、反論や疑問にも丁寧に応対できます。ちなみに、コンサルタントに必要なスキルの一つは、「人の意見を引き出す」力です。企業の中のどこに問題があるのか、真の原因は何か、解決策として有効なものは何か、そうしたことのヒントは現場の人々の発言の中に必ず見つかります。

 コンサルティングに限らず、外資系企業では、若手に難しい課題を与えて、成果の出た若手を早めに登用するという傾向があります。年功序列ではないので、誰がハイポテンシャル人材なのかを早めに見つけようとするからです。そうした人材を配して社内プロジェクトを立ち上げることも多いのですが、従来のやり方を見直すべきというテーマなので、むしろ若手メンバーの方が客観的に問題を見ることができる場合もあります。

 日本の大企業は、まさに問題の宝庫です。生産の現場では当たり前にカイゼン活動を行っているのですから、本社部門でも問題解決型チームがもっとあっていいはずです。上司という立場になった人は、若手をどんどんプロジェクトに入れて、「早いうちの成功体験」を積ませるべきです。そこで自信をつけた若手には、もっと難しい問題にチャレンジさせるべきです。管理職への昇進時期が全員横並びという会社であっても、「早いうちの成功体験」を積んだ人は、昇進前からでもリーダーシップを発揮できるようになっているはずです。肩書きがついてから威張る人物ではなく、肩書がつく前から先頭に立って行動する人物が真のリーダーになれるのです。

 次回は、日本の大企業を題材に、「和をもって尊しとなす」カルチャーがもたらす副作用について考えてみたいと思います。

著者プロフィール
伊藤武志

岸本 義之(きしもと よしゆき)
ブーズ・アンド・カンパニー株式会社 ディレクター・オブ・ストラテジー
早稲田大学 大学院商学研究科 客員教授

[主な経歴・業績]
1986年 東京大学経済学部卒、日本ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン入社。’91年からKellogg (ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院)に留学しMBA取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(PhD取得)を経て現職。20年以上にわたって、戦略や組織に関わるコンサルティング・プロジェクトを多数行ってきた。著書に『メディア・マーケティング進化論』(PHP研究所)、『金融マーケティング戦略』(ダイヤモンド社)など。

[関連サイト]
ブーズ・アンド・カンパニー株式会社
http://www.booz.com/jp/home/about/leadership/yoshiyuki_kishimoto

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